煙や熱を感知して火災の発生を知らせる住宅用火災警報器の取り付けが、消防法で義務付けられているのをご存じだろうか。そのタイムリミットは、市町村によって異なるが、最終的には来年(平成23年)5月31日までで、残り半年足らずに迫っている。だが、罰則規定がないせいか、普及率は6割にも届かないようだ。火を使わず炎も出ない"安全な"IHクッキングヒーターでさえ火災事故の例がある。師走に入って何かと気ぜわしいおり、"うっかりミス"で出火しても大事に至らずに済むように早めに取り付けよう。
■いつまでに取り付けなければならないか
住宅用火災警報器(消防法では「住宅用防災機器」)の設置が、戸建てやマンション、アパートなどすべての住居に義務付けられたのは、平成16年の消防法改正による。新築住宅は全国一律に18年6月1日から取り付けることになり、それ以前に建てられた住宅では、遅くとも23年6月1日には終えていなければならない。その"期限"は市町村条例で定めており、関東1都6県でみると、千葉県我孫子市の19年10月2日を皮切りに、大半が20年6月1日。神奈川県は全市町村が一律"ギリギリ"の来年6月1日としている。ほとんどが設置済みのはずだが、取り付けないからといって罰せられるわけではないからか、普及率はまだまだのようだ。総務省消防庁の今年(22年)6月時点での推計によると、ベスト3に入った関東でも62.2%でもう一息の感。全国平均はさらに下がって58.4%だった。ちなみに、一足遅く来年7月24日に完全移行する地デジのテレビの世帯普及率は今年3月時点でさえ83.8%だそうである。
■どこに、どう取り付けるのか
消防法施行令が全国一律に設置を定めているのは寝室。眠っているときが最も火災に気づきにくいわけだから当然だろう。寝室が階上にある場合は煙や火の通り道になりやすい階段部分に、同じ階に7m2(4畳半)以上の部屋が5室以上ある場合は廊下にも設置しなければならない(下図参照)。これが原則だが、市町村によっては、さらに多くの設置個所を義務付けている。関東の県庁所在地でみると、さいたま、前橋、宇都宮、水戸の各市は原則通りだが、横浜、千葉の両市は台所にも設置しなければならない(上図参照)。もっとも厳しいのは東京23区などで、さらに全居室に設置することとしている。
部屋のどこに取り付けるのか、その位置についても総務省令で定めている。まず、天井の場合は、火災警報器の中心が壁や梁から60㎝以上離れていること。壁に取り付けるときは天井から15~50㎝の間にあるようにする。これは、煙には天井の隅にはたまりにくいという"性質"があるので、感知が遅れないようにするためだ。エアコンや換気口がある部屋では吹き出し口から1.5m以上離して取り付ける。また、規定の個所であっても、照明器具などの熱源からはできるだけ離し、台所などでは煙や湯気が直接かかるところは避ける。誤作動を防ぐためである。
■どんな機種があるのか、どこで手にいれるのか
住宅用火災警報器が火災発生を感知する主な方式には煙感知式と熱感知式があるが、省令では台所以外は煙感知式と定めている。煙が出始めてから燃え上がるまでにはタイムラグがあり、煙のほうが火災発生をより早くキャッチでき、避難も早くできるからだ。また、警報方式には、感知した警報器だけが警報を発する「単独式」と、感知した機器だけでなく連動を設定したすべての警報器が作動する「連動型」がある。寝室と火元が離れていた場合、単独型では警報音が聞こえにくいこともあるだろうが、連動型ならほぼ同時に寝室でも警報が鳴り出すから早く気づけるというメリットがある。煙式と熱式が混在していても支障はない。機器同士の距離はコードレス電話で通話できればほぼOK。警報音も「ピー、ピー」と音だけのものと合成音声で「火事です」などと知らせる機器がある。電源は、家庭用の100ボルト式と電池式がある。前者は配線が必要だから新築時に専門業者が取り付けるケースが多い。後者は素人でも説明書を見ながら取り付け可能。天井に取り付けるのが大変なら壁に下げてもいい。リチウム電池内蔵で10年は保つものが多いようだ。
入手も簡単。ホームセンターや電器店、ガス事業者などで扱っている。価格はメーカーや機種によって異なるが、3000円位からあるようだ。住宅用火災警報器は、構造が煙や熱の感知部とそれを音や音声で知らせる警報部から成り、取り付けや取り外し、電池の交換が容易にできることなどが省令で定められている。機能についても感度の性能だけでなく、警報音は70デシベル以上の音量で1分以上鳴り続けること、電池切れや機能の異常を点滅や音で72時間以上知らせることなどが決められている。性能に不安があるなら、日本消防検定協会が国の基準に適合するかどうかを鑑定し、"合格"を認めた「NS」マーク付きが「安心の目安」になるだろう。
■効果はどうなのか
住宅火災による死者は毎年1000人以上にのぼる。うち、65歳以上の高齢者が6割を占める。また、「消防白書」によると、焼死者の6割以上が「逃げ遅れ」で、しかも午後10時~翌朝6時が最多となっている。こうした状況を踏まえて住宅用火災警報器の設置を義務付けることになったというわけである。さて、その結果はどうなったか。消防庁の統計によると、20年に1123人だった住宅火災の犠牲者は21年には1023人と3ケタの急減で、約1割も減った。今年(22年)1~3月の期間で見ても死者概数400人で前年同期の435人よりやはり1割減となっている。また、消防庁では、19~21年の失火による住宅火災について住宅火災警報器の効果を分析している。それによると、火災100件当たりの死者数は「設置なし」7.5件から「設置あり」4.7に、同様に火災1件当たりの焼損床面積は48.3m2から22.0m2に、損害額も同322万2000円から175万4000円と、すべてがほぼ半減という分析結果になっている。
■設置したら安心なの
どんな機器でもそうだが、性能通りに機能を発揮させるには、維持管理が重要だ。ホコリが付くと感度が落ちる。キッチンからの油汚れなども大敵。ホコリや汚れに気づいたらその都度、こまめに乾いた布などで拭き取っておく。また、キチンと作動するかどうか、できれば月1回位はテストしよう。点検方法は取扱説明書に記載されているはず。電池の寿命は10年が目安。電池切れは、音や光の点滅で知らせるようになっている。気づいたら即交換しよう。
■訪問販売に注意
法外な値段で売りつけたり、消防署からきたなどと語ったり、悪質な訪問販売の被害も増加傾向にある。とくに高齢者の被害が目立つそうだ。消防署員が販売することはあり得ない。今後、タイムリミットが近づくと被害が増えることが予想される。くれぐれもご注意を! 疑問の点や詳細については近くの消防署や市役所、町村の役場へ問い合わせたり、相談したりするとよい。また、財団法人日本火災報知器工業会でも「住宅用火災警報器相談室」0120-565-911で月~金曜の午前9時~午後5時、質問を受け付けている。
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